○「名和晃平 展」
いまもっとも注目を集めている若手彫刻家の発表だ。内容をやや現代アート風にご紹介すると、タイトルは化学用語で「合成」を意味する“synthesis”。その概念のもと彼の代名詞ともなっているBEADSが新たな展開をみせ、ドット繋がりを想わせる無機質なドローイングインスタレーションと相俟って、一種ただならぬ神秘感を漂わせている。
要するに、鹿さんの剥製に大小さまざまなビーズ(ないしはレンズ)が、びっしりと貼りつけてある。あるビーズを覗くと首の辺りの剛毛がぐっとアップになるし、角度を変えると今度は鼻先が目に飛びこんでくるといった按配だ。そこに確かにあるはずの鹿さんは、こうしてシカとは捉えられなくなる。みる人ごとに別の像を結んでしまうからだ。
名和晃平はこれをリアルとバーチャル、デジタルとアナログのあいだをイメージや認識がトランスコードされることで所在が揺らぎ、より今日的なイメージ、新しい感覚が開かれていくという。
それにしても、この鹿さんのイメージは一体どれほど揺らいでいるのだろう。 お知りになりたい方はこちらから⇒

名和晃平
Kohei Nawa
PixCell-Double Deer
2010
h.142×w.78×d.71cm
mixedmedia
撮影:表恒匡
Coutesy of SCAI THE BATHHOUSE
(SCAI THE BATHHOUSE、2010年9月24日〜10月30日)
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