漆に卵の殻の象嵌かと思ったら然にあらず。ローズウッド・黒檀の木地に象牙の図柄だそうです。それにしてもこの「幻想絶佳」という聴き慣れないタイトルの展覧会をみて、出てくるのは溜息ばかり。東西の王侯貴族、大富豪たちの目を見張るような日常が手にとるように分かるからです。1910年ごろの衣・食・住すべての華麗さが光ります。なかでも家財道具への凝り方は尋常ではありません。
たとえばエミール-ジャック・リュルマン制作のこのキャビネット。ピアノの鍵盤のようなデコレーションの下に破線模様があるかと思えば、それに囲まれた花瓶デザインの艶(あで)やかなこと。モダンとエレガンスの合体したアール・デコのなかでも傑出したユニークさで、もはや比べるものとてない有様です。 |