井上勝江「ウィリアム・モリスによる柳葉の図、ヤグルマギクの図、アカンサスの図」
板画に生命をこめて
井上勝江−師弟と共に−展
豊かな里山に囲まれてきた日本人にとって、木版画は美術アートであるまえに、すでにして日々の暮らしと密着した生活になくてはならない存在だった。昭和16年ごろ棟方志功が「版画」という呼称をやめ、「板画」といいだしたのも、そんなところに根ざした欲求だったのかと思う。
その志功が主宰する第23回日本板院展の会場(上野の森美術館)に、「秋近し蓮葉の図」と題した四曲半双屏風を引っさげ、大層美しいひとりの女性が立ち現れた。聞けば関東医療少年院で、子供たちに木版画を教えているという。 ひどい近視の志功は、屏風にじっと顔を押しつけるようにして、いっかな眼を離そうとしない。以来その女性、井上勝江は美術界の風雲児・棟方志功の秘蔵っ子となったのである。
自ら濁墨(どぶずみ)と称する漆黒のブラックと越前和紙のホワイト(薄卵色)がかもし出す、えもいわれぬコントラスト。さまざまモチーフを試みたのち、描写対象はしだいに花へと絞られていく。志功をして「あなたはやっぱり花だ」といわしめた比類なきデッサン力と究極の板さばき。それらすべてが今回一堂に会し、永井画廊・永井龍之介氏のご厚意でまとめて鑑賞できることとなった。まさに幸運という他はない。 by JAO
|
【展覧会データ】 |
展覧会構成 |
第1部 大慈大悲・恩師棟方志功
第2部 花を彫り花を摺る、ウィリアム・モリスより・井上勝江
第3部 「板画教室」50年の軌跡−世界遺産・滝・タワーのある
風景−・関東医療少年院 |
会期 |
平成25年2月4日(月)〜2月22日(金) 16日間 11:30 - 19:00
レセプション・懇親会 2月8日(金) 17:00 - 19:00
休廊日 2月10日(日)、11日(月祝)、17日(日) |
場所 |
銀座 永井画廊 1階、3,4,5階 |
主催 |
永井画廊 |
キュレーション |
勅使河原 純 |
|
|
なお『月刊美術』2013年2月号に、本展にちなむ「鼎談 井上勝江×ジュディ・オング倩玉×勅使河原 純」が掲載されています。 |
|
|