第25回記念東京湘南絵画会 いまコロナ後を見据えて
花見客でごった返した上野のお山も、五月に入るとガラリと雰囲気が変わる。爽やかな風に誘われてか、はたまた若葉の緑に見惚れてか、足が自然と赤レンガの美術館へと向かうから不思議だ。その東京都美術館では今年、めでたいことに東京湘南絵画会が、記念すべき第25回目の展覧会を迎えた。
四半世紀にわたる営々たる歩みに、メンバーたちの努力は並大抵ではなかったはずだ。だが会場を見渡したところ、そうした制作の疲れのようなものが垣間見えるかといえば、決してそんなことはない。むしろ相変わらず、若々しいといえるほど新清な空気が漲っている。2000年に東京湘南絵画会が発足した当時、会員各氏はそれぞれの思いを胸に竹市和昭先生のもとに集った。それが今日具象、半具象、抽象から現代的表現へと進み、さらには木炭デッサンのリバイバルと作風の幅を広げつつ、歩みのスピードを上げている。
風景画のテーマは、やはり湘南に特有の明るさに満ちた水辺の景色が中心だ。だが人物画の方はといえば、実に国際色豊かになった。若いお嬢さん一辺倒から、シニア世代あるいはお孫さんたちをも含め、身辺の人々が多様に登場してくる。その向こう側では、メンバーたち一人ひとりの人生そのものが、想像を越えて広がっていったという現実が隠されているのだろう。それだからこそ、これからはますます奥深い造形の創出が期待されるのである。AIを使った外界の薄っぺらいなぞり等ではなく、アマ・プロの区分けを越えて、大自然を含めた外界と人々の本質的な結びつきを視覚化していくことが、いよいよこの会の眼目となろう。どんなに細かい部分に分け入っても、この会ではその先には必ず「人々の実際の暮らし」というものが、幾重にも秘められている気がしてならない。
by JAO