紺碧の海にただようポロスの港
「東京湘南絵画会」には、どこをとっても主宰者・竹市和昭氏のお人柄が深く浸透しているように思われる。それは一言でいえばギリシャ風のカラフルな明るさであり、決して人を分け隔てしない開放感だろう。
印象派が実践した原色のきらめきは、この会ではより風土と同化し、理屈だけに終始しない形で日々の生活にずっしりと根を下ろしているように思われる。描かれるのはときによって、エーゲ海の沖合いを行くヨットの白い帆であったり、テーブル上を賑わすジョッキやグラスであったりする。だが、それらはいつも現実の生活だけが発する深い輝きとある種の落ち着きに満ちている。そして結局は師の体験を通して近代ヨーロッパ、わけても西欧文明発祥の地といわれるギリシャの洒落たエスプリと交感し合うのだ。
この展覧会は2000年に産声を上げたという。場所も第13回展と同じ茅ヶ崎市民ギャラリーだ。以来営々として毎年発表をつづけてこられたのは、絵というものを通してそれぞれが生活にメリハリを獲得し、夢と希望を強く実感してこられたからではないだろうか。芸術を鑑賞し、なかんずく創造するということは、人々にそれだけ大きなインパクトもたらしてくれるのだ。
生活に終わりがないように、アートにも決して終着点はない。これからも竹市和昭氏の美的エネルギーが、メンバーたちの絵心を温かく包みこみ、これからやってくる新人たちをも含めてすべての人々を鼓舞しつづけることを、心より願わずにはいられない。
勅使河原 純