西山松生「多摩川堤」2008年、油彩・カンヴァス、F120
「西山真一・松生親子展」が開催されます。
西山真一先生と西山松生氏の展覧会が、お二人の郷里・福井県鯖江市で、この4月に開かれます。真一先生(1906−1989)は福井師範学校をご卒業の後、昭和五年に上京され、以来世田谷に居を定められて、光風会と帝展・日展を舞台に骨太の写実絵画を展開されてこられた昭和画壇の大御所です。
その作品は「風景」、「裸婦」、「静物」などから出発し、人々の日常を調和のとれた穏やかな色調と、堅牢無比なフォルムでときに静謐に、またときに荒々しく捉えたものです。質実剛健というか、いたずらに表面を飾ることがありません。洒落っ気のない垂直線だけで、海沿いの街を捉えてみせた「山の手」(1960)にも伺われるとおり、芸術上のチャレンジはあっても、上手さや手際のよさをみせようといった世俗的意図は皆無です。こうした率直この上ない態度でヨーロッパにも度々足をのばされ、裸婦やパリ風景を精力的に制作してこられました。
一方、松生氏(1941−)はその真一先生のご三男です。カンヴァス上でたった独りの人物像と格闘するところから、その画業をはじめています。東京藝術大学大学院油絵科を卒業した年の作品「編み物」は、画学生らしくパレットナイフで対象を大掴みにしたデッサン風の痕跡が新鮮です。人物をあえて右に寄せ、モデルというよりモノの本質に迫ったと思われる思索の画面がつづきます。「座像」(1976)もこの系譜の作品といっていいでしょう。まだバックを細かく描きこむところまで行ってはいませんが、消しゴムがわりに多用されたというホワイトが、心地よい色彩的緊張感を孕んでいます。光風会の会員、評議員に就いたのもこの頃でした。
以来、若い人たちが行き交う場所を、一種晴れやかな社交性を漂わせながら制作します。近年その画面は、自宅付近の世田谷線各駅にまで広がってきています。「油絵に失敗作はない」が口癖の松生氏にとって電車、プラットフォーム、群集と、多くの要素が複雑に入り組む駅舎は、一層制作意欲をかき立てられる情景のようです。 by JAO
【展覧会データ】 |
展覧会 |
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タイトル |
「西山真一・松生親子展」 |
会期 |
平成25年4月20日(土)−5月12日(日)
毎週月曜日休館、ただしゴールデンウィーク(4/28-5/6)中は開館します。 |
会場 |
鯖江市郷土資料館 まなべの館 |
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