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都政新報 2009年12月18日掲載

新 アートの時代へR

●連載を終えて
 東京に文化の灯を絶やすな


 15年という比較的長いタームで、首都圏の展覧会事業をながめてきた。そのなかでみえてきたのは、大型企画展の際立った強さである。本シリーズでとり上げた「バーンズ・コレクション展」、「琳派 RIMPA」展、「国宝 阿修羅展」のほかにも、近年の「大回顧展モネ」、「ゴッホ展」、「THEハプスブルク」展と挙げはじめたらきりがない。
 日本人はそれほど、国立美術館+巨大マスコミ+上野・六本木文化ゾーンと3拍子そろった大型展で、古典美術をお勉強するのが好きだったのだろうか。思わずそう揶揄したくなるほどの独走であった。
 だが、それでは啓蒙タイプの大型企画展に死角がないかというと、実はそうでもない。活字文化から映像文化へという時代の流れは、いまこれらの事業をじわじわと蝕んでいる。新聞・書籍⇒テレビ・ラジオ⇒インターネットへと突き進む情報化の荒波は、マスコミの宣伝活動からかつての神通力を奪いつつある。
 さらにこうした傾向は、美術の制作手法そのものにも多大な影響を与えている。一言でいえば、これまで自己完結していたものが、インタラクティブな手法へと大きくスライドしはじめたといえよう。たとえば現場に美術を設置していく「インスタレーション」。作家が現地に泊まりこむ「アート・イン・レジデンス」。作家が観衆のまえで制作する「ライブ・ペインティング」といったやり方は、美術作品がもっぱら作家のアトリエのなかで制作されていた時代には、思いもつかなかった手法だ。
 それが短期間にこれだけ普及したのは、もの珍しさからだけではない。インタラクティブな時代の要請に適っていたからだと、私には思われる。ことはアーティスト側の手法にとどまらない。それをとり囲む市民サイドも大きく変わった。制作を支援したり、作品鑑賞を手助けしてくれるアート系ボランティアの活躍すら、見方を変えればインタラクティブな動向のひとつといえるだろう。
 他方この間に「大地の芸術祭」、「横浜トリエンナーレ」といった巨大なイベントが、多数登場してきた。世の中のグローバル化が後押しする、展覧会の国際交流事業化、国際アートフェア化の流れである。美術の祝祭を盛り上げていく機能が極限まで強化される一方、一定期間で消費しつくす傾向にはますます拍車がかかっていく。この流れはやがてアートの東京一極集中を是正する動き、すなわちアート版公共事業「わが町のアート・イベント」として全国に波及していく。
 その際の合言葉は「現代美術によって地域を甦らせよう」だ。なるほどアートには言葉を使わない国際共通語という側面があるので、理念的にはきわめて当を得た企画である。しかし現代美術が、欧米の市民生活のなかで育まれてきたことは紛れもない事実だ。直輸入されたものが、すべて日本を含むアジアの市民やアーティストに馴染みやすく出来ているとは限らない。
 そうした戸惑いに強烈な一撃を喰らわしたのが、2001年の村上隆展であった。それまでオタク文化としてひと括りにされてきたマンガ、アニメ、フィギュアなどが所狭しと展開される。奈良義智、中原浩大、ヤノベケンジ、宮崎駿のジブリ作品。そして彼らをプロデュースしたギャラリストたちが新しいスターとして時代の脚光を浴びる。日本固有の造形スタイルが海外で評価され、産業的にも莫大な富を生むようになったのだ。
 オタクにひけをとらない評価を獲得たのが写真・映像のジャンルであった。このシリーズでもやなぎみわ展、蜷川実花展、「森山大道展」、「アネット・メッサジェ」展などをとり上げた。人の手業に行き詰まりを感じるいま、カメラというメカニックな眼で外界を切りとる作業は、ひときわ新鮮なのかもしれない。いずれも内部からの地力で現代美術のフレームに揺さぶりをかけようとする動きである。
 一口にアートといっても、文学は依然として活字文化の色彩が強いし、音楽は電波媒体そのもの。美術だけが堅い現物主義に縛られて、考古学的でさえある。簡単くくれる話しではない。だがそのどれもが、結局は人と人のコミュニケーション活動であることに変わりはない。アートとはつまるところ、人々の心の奥底に潜むデリケートな作用を顕在化させてみせる、もう一つのコミュニケーションに他ならないのだ。だからこそこの文化の灯を絶やさないことは、日本の首都・東京にとっては、ことのほか大切だと思われるのである。=おわり

 

 


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