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都政新報 2009年12月11日掲載

新 アートの時代へP

●「墨東まち見世2009」(2009年9〜12月)
 街が遊びまくる100日間


 墨田区・曳船駅からひろい明治通りを10分ほど南に行くと、「キラキラ橘商店街」と書いたアーチがみえてくる。京島3丁目に位置する小さなショッピング・ストリートだ。下町の風情ただようお店が軒を連ねているが、さほど変わった通りにもみえない。強いていえば最近、「のんちゃんのり弁」という小西真奈美主演の人気映画のロケ地になったことぐらいだろ。
しかし劇作家の岸井大輔によると、お年寄りの多いキラキラ橘商店街は、全国でも珍しい「コミュニティ・アート」向きの伝統保存空間なのだそうだ。彼は通りの端に近い元帽子屋さんの空き店舗をみつけ、そこに100日間寝泊りしながら、新しいアート誘発の戦略を練っている。名づけて「墨東まち見世」のロビー活動だ。
 とかく顔見知りだけで小さく固まりがちなローカル・コミュニティに粘り強く働きかけ、突然迷いこんでくる「よそ者」をもとりこむ、開放系の公共広場に生まれ変わらせようとする。そのための前線基地が、誰でも勝手に遊べるお店「ロビー」なのだ。今年の6月ごろ東京文化発信プロジェクト室から打診され、早速作家たちと相談の結果、EAT & ART TAROの「向島缶詰アーカイブ」をロビーでとり上げ、三宅航太郎の「向島おしょくじプロジェクト」ともコラボレーションを組むことにしたのである。
 「おしょくじ」の方は、近隣の飲食店の箸をおみくじの棒に見立てている。箱から棒を引きぬくとお札ならぬ、お店の案内状がもらえる。それに従って進むと、「昭和モダン五〇年以上営業」の「疲れが取れるかもしれぬ」喫茶店などに到着するという趣向だ。「向島缶詰アーカイブ」は、現在向島周辺でつくられ食べられている家庭料理を缶詰にして、タイムカプセルさながらに未来の人々へ届けようという試みである。缶詰は8個セットの「キラキラ橘お惣菜アーカイブ」などとして、作品化(商品化)されている。
 ロビーは見知らぬお客でいつも賑わっているが、とり立てて面白い仕掛けがあるわけではない。私が訪問したときには、北川貴好の電球を使ったオブジェが天井から吊り下げられていたが、それもじきに作者が持ち帰ってしまった。恐らく制作の最中だったのだろう。ときどき通りのお婆ちゃんがバナナを差し入れにきてくれて、辺りにはごくごく穏やかな時間が流れていた。
 しかしこののんびりした活動も、実は「墨東まち見世2009」というNPO法人向島学会が主催者に名を連ねるアートプロジェクトの一環である。その「墨東まち見世2009」は、「東京アートポイント計画」という(財)東京都歴史文化財団が推進する「東京文化発信プロジェクト」の一翼を担う、れっきとしたアート創造活動である。
 この「新 アートの時代へ」シリーズでは、東京都美術館、東京都現代美術館、東京都庭園美術館、東京都写真美術館、江戸東京博物館など、主として東京都歴史文化財団が統括する巨大文化施設の事業に焦点を当てて検証してきた。いずれも膨大な経費と人員を投入した、大量動員型の展覧会イベントである。
 しかしそれらのすべてが、関係者をじゅうぶんに満足させるだけの結果を上げているわけではない。そうしたなかで「東京アートポイント計画」のように、コミュニティ・アートという聞き慣れない活動をとり込んだ比較的小振りなプロジェクトが、じわじわと活動領域をひろげている状況は何とも皮肉だ。
 これから先のアートの展開を考えるとき、文字通り体を張って町起こしを地でいくコミュニティ・アートが持つかもしれない価値と意義を、今一度見直していく必要があるのではないだろうか。

 

 


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