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都政新報 2009年10月13日掲載

新 アートの時代へ @

●連載に当たって
 淀んだ空気からの脱却を


 このところの経済不況で、「文化の時代」という言葉はあまり耳にしなくなった。しかしわが国が政治経済の大変動で、ともすると行動の基軸を見失っていくなか、お隣の中国をはじめBRICSと呼ばれる新興国では、GNPの高い伸び率を背景に確実なアートの時代を迎えつつある。このままでは日本は、追いつき追い越される一方だ。
 そこで東京の文化にいま一度活力を呼びもどし、再起動させるため、ここ15年ほどの間に主として首都圏で行われてきた画期的な展覧会・アートイベントの数々を思い出してみよう。それらによって時代の大きな流れを俯瞰し、文化全体の進むべき道をいま一度照らし出したいと思うのである。
  それにしても首都圏の美術はいまひどく疲弊している。デパート系の美術館は次々と姿を消し、美術雑誌は活字離れに苦しみ、テレビ・ラジオの美術番組も押しなべて低視聴率にあえいでいる。長い暖簾を誇った老舗画廊は代替わりを期に撤退していく。ギャラリーの後にはブランドが瀟洒なビルを建てるというのが、ひところの銀座の景色であった。アートはもはや、人々の心を捉えるアイテムではなくなってしまったのだろうか。
  そしていま、誰もが口を揃えるのが「美術館がちゃんと機能していない」ということだ。この春まで私も都内の公立美術館に勤めていたので、あまり大きな顔をしていえる話ではないが、社会全体が閉塞感に見舞われたとき、公金で運営されているパブリックな美術館がアート本来の力を発揮しないでどうする、というほどの気はする。
  ところがである。美術館はその持てる力を、いままったく発動することができないでいるのだ。なぜか。この「新・アートの時代」シリーズを始めるに当たり、まずその辺りを説明しておく必要があるだろう。
  民主党を中心とする三党連合政権が、口を酸っぱくして「行政の無駄を省く」と力説するはるか以前から、文化予算は少しずつだが確実に削減されてきた。よく知られているように指定管理者制度の導入は、外郭団体の効率的運営、すなわち維持運営費のカットに主眼が置かれている。運営費の削減は当然のことながら、その最大の要因である内部職員の人件費の削減におよぶ。平成18年当時、美術館の現場ではさかんにこう囁かれていた。「事務職員は学芸員になれない。だが学芸員はいつでも事務職員になれる」。つまり人員削減の数合わせは、事務職が引っかぶって辞めていくから、後は残った学芸員ですべての業務をまわしてくれというのである。
 これによって学芸員、ことに学芸課長級以上の管理職は、事務的業務を一身に引き受けざるを得ない立場となった。それまで管理部門の事務職員と対立してでも生きのいい企画を引っ張ってこようとした専門員が、自ら収益確保の責任者となり、美術現場のリサーチそっちのけで、リスク負担をともなう事業の押さえこみに躍起となる。その結果、思い切りのいい魅力のある展覧会事業が打てなくなった。そして観客を集められない、収益が上げられない。さらにそれがまた次の観客離れを引き起こすという、典型的な悪循環に陥ってしまった。
 そしてここにもうひとつ新たな事態が発生する。東京では2000年辺りを境にサブカルチャー、すなわち「オタク」と称される若者文化が一気に表舞台へ上がってきたのだ。この動きによって美術に関係するあらかたの団体は、ごく一部の容認・推進派と、大部分の無関心・消極派に峻別されてしまった。リーマン・ブラザーズの倒産に端を発した「百年に一度」といわれる世界恐慌は、こうした淀んだ空気の真っただ中に発生したのである。

 

てしがわら・じゅん氏=美術評論家48年岐阜県生まれ。東北大学文学部美学美術史学科卒業。世田谷美術館開設準備室に入り美術課長、学芸部長、副館長を経て、09年美術評論事務所「JT-ART-OFFICE」を設立、独立する。執筆・講演を通じ「美術の面白さを広く伝え、アートライフの充実をめざす」活動を展開中。現在、三鷹市芸術文化財団理事、東京都写真美術館・横浜美術館外部評価委員ほか。URL http://www.jt-art-office.com

 



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