塩田千春さんの作品はよく「重たい」といわれる。しかし私は必ずしもそうは思わない。
死が支配したかのような深い静寂のなか、黒い糸を張り巡らした繭の奥底で、微かに何かが蠢いている。
それはまだ音にもならないただの予兆。だがしかし、冷たい硬直の極北から伝わってくる息遣いは、確かに生への歓喜に満ちている…。
というわけで彼女のつくる作品は、つねに再生と復活をめぐる聖-性のドラマだと思う。今回は黒い糸がなぜか細い透明チューブの束に変貌している。繭はそのなかを不断に流れる真っ赤な血潮となって、はてしもなく鼓動のまわりをめぐるのだ。(JAO) 詳しくはこちらから⇒