鹿の剥製を使った「エレクトロ」では、森の奥でよろよろと立ち上がるバンビに、医療機器を思わせる金属の矯正具をはかせる。その痛みと色っぽさが、みる人の胸をチクチクと刺激する作品だ。「インフェルノ」では、轟々と落下する滝のただなかに放りこまれた人が、身の置き所もなく立ちすくんでいる。それらは、いままでのもの静かな彫刻では思いもよらなかった幽体/ファントムへの多角的アプローチであり、新たな創出なのかもしれない。

 

小谷元彦 「インフェルノ」2008-10年

小谷元彦 「インフェルノ」2008-10年、音楽・高嶋啓、制作協力・ステッチ、マックレイ、撮影・木奥恵三、森美術館提供


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