ハーブ&ドロシー

 

コレクションをはじめた1960年代、世はポップアートの全盛期だった。しかしA.ウォーホルやリキテンシュタインはすでに高過ぎて手が出せない。だが登場したばかりのミニマルアートやコンセプチャルアートなら、まだ何とかなりそうだ。そこで二人はギャラリーから、作家のアトリエへと足を伸ばすようになる。
夫妻から電話をもらったジャンヌ=クロードは、受話器を片手でふさいで、クリストに「これで家賃が払えるわ!」と囁いたという。チャック・クロース、ロバート・マンゴールド、ローレンス・ウィナー、リチャード・タトル、ソル・ルウィット、河原温、リンダ・ベングリス…。二人に助けられた、かつての新人たちは枚挙にいとまがない。
だが生まれ立てのアートとのつき合いは、ロマンだけでは済まない。評価の定まらない現代美術を購うという行為は、一歩間違うと財産失くすことにつながるからだ。その面白さと凄絶さを、これほど赤裸々に描き出した映画は珍しいだろう。夫妻の場合は努力のかいあって、ワシントンDCのナショナル・ギャラリーに作品がおさまり、これから50×50プロジェクト(全米50州に50点ずつ寄贈する計画)がはじまるという。これぞまさに現代のお伽噺である。

 


ミタカ・キイタカ 野次馬サイト
Copyright© JT-ART-OFFICE All Rights Reserved. sported by spica